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【USB-Cの回路図設計 】第一章

2023年1月31日火曜日
USB-C
USB-C
本稿は、USB Type-CまたはUSB-Cを理解し、次の回路ボード設計に導入するのに役立つ2パートシリーズの第一章です。下記について説明していきます。
  • USB-Cピン、および異なるコンフィグレーションでのピンの使用
  • USB-Cケーブルが、上向きか下向きいずれの方向でも挿入可能な理由
  • 同じデバイスが、ホストまたはクライアントのいずれとしても動作する理由
  • USB-Cの電力供給
  • DRP、DRD、UFP、DFPといった新しい用語
  • アクティブなUSB-CケーブルとパッシブなUSB-Cケーブルの違いとアダプタケーブルの動作の仕組み
まずは、背景について見ていきます。
USB規格とコネクタ

周辺機器とパーソナルコンピュータ間の接続を標準化するために設計されたUSBは、1996年に初めてリリースされ、これまでに4つの世代が登場しています。USB 1.x、USB 2.0、USB 3.xとUSB4です。リリース以降、シリアルやパラレルポートなどさまざまなインターフェースがこの規格に取って代わられてきました。USBは、デバイスによる自己設定と電力供給を可能にし、そのほかにも便利な機能を備えています。USB規格の進化の過程では、異なるコネクタが利用されてきました。これを以下の表に示します。

USB Standard Connectors

USBコネクタとUSB規格 - さまざまな規格、および各コネクタが登場した時期

USB-C Connector

表を一見すると、USB-Cは、USB規格の単なるもう1つのコネクタのように見えます。しかしUSB 3.2以降、USB-Cがほかのすべてのコネクタに取って代わるものであることに注目してください。

また、USB-Cより前のコネクタは、ホストサイド(Type-Aとそのmini/micro異形コネクタ)およびクライアントサイド(Type-Bとそのmini/micro異形コネクタ)のいずれか専用となっていました。つまり、クライアントとホストの側両方で利用できることは、USB-Cコネクタの面白い特徴なのです。

USB 2.0バージョンまで、規格準拠のコネクタには4つのピン、Vbus、D-、D+とGNDがありました。さらにUSB 3.0バージョンでSuperSpeedコネクタが登場します。これには、SSRX-、SSRX+、SSTX-、SSRX+とGND_DRAINの5つのピンが追加されました。この増えたピンを利用できるよう、コネクタには変更が加えられました。5つのピンの追加に当たり、Type-Aの変更は簡単でしたが、Type-Bには小さな突起部が加えられました。Micro-Bコネクタは、分かりづらくて使いにくいコネクタになってしまいました。

Types of USB

画像参照
Type - A https://en.wikipedia.org/wiki/USB_3.0#/media/File:Connector_USB_3_IMGP6024_wp.jpg
Type - B https://4.bp.blogspot.com/-2IBVZ1_H6f8/VDQThGSgCHI/AAAAAAAABD4/egZs7BXvE7o/s1600/etymmm.jpg
Micro - B https://m.media-amazon.com/images/I/61qynPKsvvL._AC_SL1500_.jpg

このユーザ体験の問題を解決するためにUSB-Cコネクタが導入され、標準USBケーブルとして初めて回転対称なものとなりました。

24個のピンがあります。
USB-C 24 pins connector
  • 以前のバージョンと比較すると、それまでは1レーンしかなかったSuperspeed信号が、USB-Cでは2レーンに。
  • 回転対称な電力ピンの追加。
  • D+とD-信号の対称ペア(デバイス側では余剰。ケーブルがルートするのは1つのD+と1つのD-のみ)。
  • 新しい信号として、コンフィグレーション制御用のピン2つとサイドバンド用のピン2つ。
ピンの用途
  • USB-Cは、データ信号用のデフォルトのD+とD-ペアを利用して、デフォルトのLow/Full/Highスピード(2.0)接続にも利用可能です。
  • また、高速レーンとコンフィグレーション制御ピンを利用して、SuperSpeed(3.x)接続にも利用可能です。
  • また、VBUS、GNDとコンフィグレーション制御を利用する場合、Power Deliveryインターフェース(チャージャー)として利用することもできます。
  • オルタネートモードでは、例えばDisplay Portとして利用することもできます。SuperspeedレーンをDisplay port信号として再利用し、SBUをディスプレイ設定用の補助チャネルとして利用することで、最大で4のデータラインが可能になります。このコンフィグレーションでは、依然、USB 2.0をD+とD-ピンで利用できます。
  • オーディオアダプタアクセサリとしての利用も可能で、ヘッドフォンやマイクに対応できます。
Audio Adapter Accessory
用語
USB-Cのドキュメンテーションでは、規格の以前の世代ではあまり利用されていなかった新しい用語が出てくることにも注意してください。以下に見てみましょう。
  • DFP: Downstream Facing Port - USBホスト側ポート。電力を供給するソース。
  • UFP: Upstream Facing Port - USBクライアント。電力を受けるシンク。
  • DRD: Dual Role Device - ホストまたはクライアントポートとして動作可能(OTG用語に取って代わる用語)。
  • DRP: Dual Role Power - 電力供給側または電力消費側として動作可能。
DFPとUFPという用語は理解しやすいのですが、分かりにくいDRDとDRPという用語は、次に挙げるUSB-C規格内の2つの独立した役割のために意図的に作られたものです。
  • データの方向について - ホストとクライアント
  • 電力の方向について - 電力シンクと電力ソース

このため、ある同じデバイスを同時にクライアント(データ方向)と電力ソース(電力方向)として機能させることができます。この例といしては、一部のドッキングステーションがあります。USBクライアントではありますが、ノートパソコンを充電する際には電力ソースにもなります。

コンフィグレーションチャネル
USB-Cで追加された新しいピンの中でも、コンフィグレーションピンであるCC1とCC2は次のとおり3つの基礎的な目的があるので、特に重要です。
  • ケーブル方向の検知:
    ケーブルは回転対称なため、どちら向きでも挿し込むことができます。このため、適切な通信の実現には、デバイスが必要なピンを多重化できるよう、向きを検知することが極めて重要です。コネクタではすべてのピンが対称となっているわけではないことに留意してください。
  • 役割の検知:
    これ以前の規格では、ホスト側(Type-A)とクライアント側(Type-B)で異なるコネクタがあり、通信における役割の判断は、根本的に簡単なことでした。つまり、準拠しているケーブルを使用する場合、例えば2つのホスト同士を接続するのは不可能だった、ということです
    USB-Cでは、コネクタの形状によって2つのホスト間の接続を防ぐことはできません。役割検知の機能は、そのような場合に損傷が発生しないようにします。また、デュアルロールデバイスが組み合わされた場合にも、通信でどちらのデバイスがホストでどちらのデバイスがクライアントなのかを定義するためにも、役割検知は必要不可欠です。
  • 電力検知と交渉:
    利用可能な電力コンフィグレーションにはさまざまなものがあるため、クライアントとホストの両者は相互の電力分配の設定について合意する必要がありますこの設定には、異なるVBus電圧と最大電流処理能力が含まれます。

これは、次の図で示す仕組みによって実現されています。

Cable orientation and role detection setup

ケーブル方向と役割の検知の仕組み

  • アップストリームデバイスでは、CC1ピンとCC2ピンにプルダウン抵抗があります。
  • ダウンストリームデバイスでは、CC1ピンとCC2ピンにプルアップ抵抗があります。
  • パッシブケーブルでは、ルートされるCCピンは1ペアだけです。
どちらの側も、CC1とCC2ピン両方の電圧を検知することで、次のとおりすべてのパラメータを簡単に定義できます。
  • 役割検知 - 電圧の変化があるか? 変化がある場合、片側がUFPでもう片側がDFPだ、ということになります。UFPデバイスが電圧の変化を検知しない場合、その接続にはDFPがない、ということです。DFPが電圧の変化を検知しない場合、逆端はUFPではない、ということになります。電力バスをオンにする前にこの電圧感知のステップがあるため、逆端が同じ種類のデバイスに接続されている場合にも問題にはなりません。これについては、このブログで後述します。
  • ケーブルの向き - どのピンで電圧が変化するか?ケーブルのCCピンの間の接続は1つしかないため、ピンの1つのみで電圧が変化します。これにより、各先端におけるケーブルの向きが分かります。
  • 電力検知 - 電圧レベルはどうか? DFPデバイスは、異なる値のプルアップ抵抗を備えることで、CCピンで発生する電圧レベルによって通電能力をUFPデバイスに簡単に通知できます。詳細は後述します。

コンフィグレーションチャネルは、デバイス間の高度な電力交渉のための双方向通信バスとして用いられます。アクティブケーブルでは、電力処理についてケーブルの性能をCCバス上で通信できるマーカーチップが搭載されています。詳細は後述します。

もう1つのCCピンは、ケーブル内のあらゆる既存チップへの通電用に利用できます。こうしたチップには、マーカー、信号反応器、アダプタがあります。これらのアクティブケーブルにはプルダウンRa抵抗があり、VCONN電圧(5Vで一定、最大1W)で通電されます。通信バスで使われる別の方を利用可能なため、ケーブルの向きによっていずれのCCピンもVCONNに切り替えることができます。この切り替えを行うのは、CC1またはCC2を電源に接続するVCONN制御信号です。この仕組みは次の図で確認できます。

DFP to UFP

USB-Cの重要な特徴として、VBUSは常時通電されない、という点があります。VBUSが常時通電されていた以前のUSB規格とは異なり、USB-CのVBUSは、送電側がCCピンの電圧レベルを観察し、シンクが接続されていることを検知して初めてオンになります。

可能なコンフィグレーション
コンフィグレーションチャネルについて説明してきましたが、いくつかの例を挙げてどのように動作するのか見てみましょう。
  • DFPからUFP
Source to Sink

この構成では、2つのデバイスが接続されるとCC1の電圧が落ちます。すると、デバイスのUSBコントローラがVBUSソースをオンにし、シンク側デバイスは電力を受けることができます。また、コントローラはケーブルが反転していないことを検知し、また、アクティブケーブルへの通電のためにCC2ピンがVCONNに接続されます。この切り替えの後、シンクデバイスは以前の世代と同様にエニュメレーションの要請を行えます。

  • DRP to UFP
DRP to Sink

DRPは、DFPとして動作するよう設定することができます。この場合、CCピンはプルアップ抵抗に接続されています。CC1で電圧の変化を検知したら、デバイスのUSBコントローラはVBUSソース、および、CC2でVCONNをオンにできます。

  • DFPからUFP
DFP to DRP

DRPは、UFPとして動作するよう設定することも可能で、この場合、CCピンはプルダウン抵抗に接続されます。CC電圧の変化が検知されたら、DRPデバイスのUSBコントローラはVBUSシンクをオンにすることで、DFPデバイスからの受電を可能にします。

  • DRPからDRP
DRP to DRP

この構成では、片方のデバイスでCCピンのプルダウン抵抗が有効になっており、もう片方ではプルアップ抵抗が有効になっています。次にソースとして動作しているデバイスがVBUSソースをオンにし、シンク側デバイスはVBUSシンクをオンにします。

  • 誤った組み合わせ - ケーブル両端のUSB-Cコネクタはどちらも全く同じなため、ソースデバイス同士、シンクデバイス同士を誤って接続してしまう可能性はあります。いずれのケースでも通信は動作しませんが、デバイスが損傷する危険はありません。
    • ソースからソース
Source to Source

CCピンで電圧の変化がないため、VBUSソースがオンになりません。

    • シンクからシンク
Sink to Sink

VBUSソースがありません。電圧ソースの衝突はあり得ません。

  • レガシーデバイス
    • レガシーの電力シンクをUSB-Cソースに接続

以前の世代のUFPデバイスとの互換性は、シンプルなアダプタで提供できます。USB-Cソースデバイスがアダプタを検知してVBUS電力をオンにするよう、このアダプタにはCC信号のプルダウン抵抗が必要です。

    • レガシーの電力ソースをUSB-Cシンクに接続
Legacy power source connected to USB-C sink

逆の場合もあります。USB-Cシンクデバイスが、Type-AまたはType-Cケーブルで以前の世代のソースデバイスに接続されることもあります。この場合、USB-Cデバイスが自身のCCピンの電圧変化を感知できるよう、CCライン内部にプルアップ抵抗が必要です。

Power Delivery

USB-Cでは、幅広い範囲の電力供給設定が可能です。最初の3つのレベルは、USB-Cではないシステムとの後方互換性があります(例えば、Type-Aコネクタ利用の場合など)。

後方互換性のあるPower Delivery
電力モード CC用途 検知​ 電圧​ 最大電流​ 最大電力
デフォルト USB 2.0 DFPまたはType-Aアダプタケーブルで56kΩプルアップ​ USB 2.0信号でのUSBエニュメレーションが必要エニュメレーションなしの場合、100mAのみ許可(2.5mAは保留) 5 V​ 0.5 A​ 2.5 W
デフォルト USB 3.x DFPまたはType-Aアダプタケーブルで56kΩプルアップ​ USB信号でのUSBエニュメレーションが必要エニュメレーションなしの場合、150mAのみ許可 5 V​ 0.9 A​ 4.5 W​
USB BC 1.2 DFPまたはType-Aアダプタケーブルで56kΩプルアップ USB 2.0信号のD+とD-ライン間の抵抗測定により、バッテリー充電ホストの存在検知 5 V 1.5 A​ 7.5 W​

Type-A to type-Cケーブルで利用できる後方互換の電力設定があります。USBエニュメレーション処理が必須であることに留意してください。ただし、バッテリー充電器でエニュメレーションのためだけにチップを入れるのは合理的でないため、USB BC 1.2のケースは例外です。この場合、壁の電源アダプタでのD+とD-の短い接続が、バッテリー充電器の存在をシンクデバイスに知らせます。これにより、USBエニュメレーションなしで最大1.5Aまで引くことができます。

シンプルなPower Delivery​
電力モード CC用途 検知 電圧 最大電流 最大電力
USB-C 5V/1.5A DFPで22kΩプルアップ UFPがCCピンでのプルアップ抵抗値を検知 5 V​ 1.5 A​ 7.5 W
USB-C 5V/3A DFPで10kΩプルアップ​ UFPがCCピンでのプルアップ抵抗値を検知​ 5 V​ 3 A​ 15 W​

USB-Cでは、DFP側での異なるプルアップ抵抗値のみを必要とする、2つのシンプルな電力モードが導入されました。これらのモードは、ケーブル両端がUSB-Cコネクタの場合のみに動作します。レガシーのType-A to Type-Cアダプタケーブルでは動作しません。

高度なPower Delivery​
電力モード CC用途​ 検知 電圧​ 最大電流​ 最大電力​
USB PD バス DFP、UFPとマーカーケーブル間のバス通信 5-20 V​ 5 A​​ 100 W​
USB PD拡張電力範囲​​ バス DFP、UFPとマーカーケーブル間のバス通信 5-48 V​ 5 A​ 240 W​​

電圧と電流交渉のためにCCチャネルを通信バスとして利用することで、利用可能な電力を上げることができます。電流が3Aを超える、または電圧が20Vを超える場合、ケーブルには、通信およびこの高度な電力モードを可能にするマーカーチップが必要です。パッシブケーブルでは、最大60W(3A/20V)までサポートされます。

これらの表から分かることを、次のように図と文章でまとめてみました。

Current and Source Power Rating
  • 最大15W(5V/3A)まで(電圧は5Vのみ)、抵抗の値で通知可能。
  • これを超える電圧と電力は、コンフィグレーションチャネルバス上での交渉が必要。3Aを超える電流には、マーカーICが内蔵されたケーブルが必要。

これで、USB-Cの基礎情報、役割の定義と電力供給についてご理解いただけたかと思います。次のブログでは、USB-Cの実世界の例を提供し、データ信号について説明していきますので、どうぞお楽しみに。

記者:
Peter Lischer
、シニアハードウェア開発者、Toradex

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